木が倒れて道を塞いでいた。魚屋の入口のすぐ脇から生えていた古い銀杏で、店の看板みたいな存在だった。傍によって見ると、なかはスカスカの洞になっていたから、自重に耐えられなくなったのだろう。
木はしばらく放置されていた。本来なら魚屋が片付けるんだろうが、最近店を閉じたものだから、どうしようもない。店とほとんど同時に、 この世に別れを告げるなんて、ちょっと出来すぎているようだ。