『PERSONA』とか『Asakusa Portraits』というタイトルも良いけど、最初の『王たちの肖像』というのが私にはいちばんしっくりきます。これは師の福田定良さんがつけたもので、福田さんの書からた「あとがき」にもグッときます。
この「王」とは、「ユダヤ人の王」と書かれた十字架を背負い、見物人から嘲笑されて処刑場に引き立てられるイエスのこと。しかし世間から疎んじられる人の中に真実がある。ただしらそのようなことを見抜けるものも、やはり同じく信念を曲げぬために嘲笑されている「王」なのだと、書かれていました。
福田さんは長く『カメラ毎日』の連載をもたれ「写真の素人」としての意見を綴っておられた。その中で対談も多く、写真家や評論家から素直に教えをこう、という姿勢も凄いと思いました。それらを消化して、あたな疑問を立てられるという感じでした。それは本筋であった哲学でも同じであったとも聞きます。
いちばん心に残るのは、同誌の「アルバム」欄に鬼海さんが登場した時に書かれた文章です。二人の関係は明かしていないのですが、教え子がスタートライン立てた喜びと心配、つまり無償の愛情に溢れています。鬼海さんは、あれを読んで本当に嬉しかったはずだと思います。
最良の師に出会われ、その言葉を大切にされ続けた鬼海さん。それは正しく、幸福だったのだと思えます。