昨年の後期、しばらく学校に来ない生徒がいた。まじめで熱心な生徒だったので、なにかあったのかと思った。彼女が数カ月ぶりに教室に現れたとき理由を聞いたら、やはりお金の問題だった。
彼女の家は母子家庭で、障碍者の妹がいる。そこに離婚した父からの養育費が滞り、母も身体を悪くしてしまった。収入は妹の障碍者年金だけになったため、彼女がしゃにむに働いていた。その感、彼女は母に、いっそのこと生活保護を申請したらどうかと言ったが、それは拒否されたらしい。
「卒業は諦めました」と彼女は言った。けれど「つきたい写真の仕事があるので、それは諦めてません」と言葉を続けた。絶望に囚われてないので、少しだけホッとした。
ひとり親、しかも相対的貧困率の高い母子家庭の生徒はかなりの比率でいる。このコロナ禍でその教育格差はさらに広がるだろうことは、目に見えている。それは日本の将来を、あらかじめ失ってしまうことを意味する。早く制度的な救済策を打ち出して欲しい。