この写文集『写文集 我が愛する詩人の伝記』は先週くらいに出たものだが、初出は古い。なにしろ1958年に『婦人公論』で連載されたものだもの。作家の室生犀星が親しかった友人の思い出を書き、濱谷浩がそれぞれの所縁の地の風景を撮るという趣向。文も写真も澄んだ感じがして、とてもきれいだ。
じつは室生には表題の単著があり、濱谷には自身の写真だけで編んだ『詩のふるさと』という写真集が出されている。今回の出版は、それをもとの合作のスタイルとし、あらためて提示しているところに意味があるのだろう。
室生は濱谷について、しなやかな強さを持った人という印象を持っていたようだ。
「写真家濱谷浩さんが見え、そして帰られると、うちの娘は久しぶりで柔(やさ)しい人がらを見たといった。柔しくない人間は柔しい顔をつくろうとしてもそれはだめだ、寧ろ地のままの気難しい人間は、そのままで応対していた方がよい。濱谷浩さんの周囲はわたのように物柔らかさで包まれている。わたはわたでも、すじの強い切れない真わた、横縦にねばりのある勁いいとが、網目状に絡み合って解こうとし咲こうとしても、みんな絡むちからで張り合っていて解けない」
室生犀星 文/濱谷浩 写真『写文集我が愛する詩人の伝記』
定価:3,850円
発行元:中央公論新社
表紙