今日は何年かぶりの観劇、題名は「彼岸花の咲く家」。亡くなった画家の遺作を巡って、娘と画家の愛人との葛藤を描いた、ファンタジー要素のあるお話。12月に彼岸花とは似つかわしくないが、10月公演が台風で流れて今日になってしまったからしようがない。
これを見に来たのは、作が枕木きり子(ペンネーム)だから。有名な脚本家ではなく、まだまったく無名の新人さん。ただ彼女は写真学校のゼミの卒業生で、なぜか京都に住んで脚本を書くようになり、本作で三作目になるらしい。
劇中、ところどころ彼女の個人的な体験が反映されている部分に気づく。それがちゃんと作品に消化されている。オリジナリティの源泉は、体験にあるんだなぁと改めて思う。
終わってから枕木に聞くと、途中、演出や役者さんとの読み合わせで三度ほど大きな手直しをしたそうだ。「それでずいぶん良くなりました」と彼女は言う。
それで写真学校の卒業制作のことを思い出した。文才のある彼女は写真ではなく安部公房の「箱男」についてのエッセイを書いたのだが、その時もアドバイスを消化してクオリティを上げた。その頭の柔らかさに感心したものだった。
いまはある劇団に所属していて、主宰の先生がずいぶん彼女を買ってくれている。チームでの制作を苦にしない性格だし、演劇ではなかなか食えないけど、続けていくと道が開けるかもしれない。
遠慮なくそうなってほしい。