木村伊兵衛賞が発表になった。片山真理さんと横田大輔さんというのは、仕事の展開を見ていれば、ごく当然の結果だ。気になるは、彼らの作品は今後どこに保管されるのだろうかということだ。川崎市市民ミュージアムの水害の後始末もまだなだし、ちょっとした個人的な記憶もあって、そのことが気になっている。
木村伊兵衛賞の受賞作品が、川崎市市民ミュージアムに寄託されたのは1995年の「木村伊兵衛賞の20年展」がきっかけだった。当時、私はこの展示にアシスタントのようなかたちで関わっていたので、寄託の経緯を横で見たいた。展示のために集めた作品は、当初、朝日の地下書庫に置かれ、地方への巡回展のたびに出庫していた。川崎市市民ミュージアムに寄託することになったのは、ようやく巡回展が終わるころだったと思う。
そもそもこの展覧会は朝日の企画部が関与せず、編集部のある編集委員が発案したものだった。それゆえ見通しにもノウハウにも欠けていが、彼の知己を使ってなんとか実現させたのだった。写真美術館の展示で、その看板を鈴木清さんが担当したのもそうだった。その展示の最終日にとつぜん呼び出され、壁にあいた釘の穴を埋めたこともあった。担当学芸員の横江文憲さんが後ろで見ておられ、私たちの作業をチェックしていたのを憶えている。
さまざまなことが見切り発車でトラブルばかりが多く、そのときの苦さがまだ口の中に残っている。とはいえ、私にとってもすべてが初めての経験で、展覧会の仕組みを勉強させてもらったのだった。