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河崎晃『長谷川三郎 空想美術館』を手にして思うこと

2026-07-06||鳥原 学

生前、お世話になった美術研究者の河崎晃一さんの遺稿が一冊にまとめられ、手元に届いた。ライフワークであった、日本における抽象画の先駆者についての研究成果をまとめられた『長谷川三郎 空想美術館』。

芦屋市立美術博物館、兵庫県立美術館などで学芸部長などを歴任されたが、こと写真については中山岩太とアシヤカメラ倶楽部について熱心に取り組まれ、その成果も大きかったと思う。1995年の阪神・淡路大震災後、被害を負った中山邸から原板を救出し、改めて整理されたことも新しい理解に繋がっている。ちょうどその頃、私も河崎さんとお目にかかり、震災と向き合う若い写真家を紹介され、当時勤めていたスペースで展示をさせていただきました。

その後、芦屋市立美術博物館は、芦屋市の財政破綻にともない体制が大きく変わり、以前の職員はすべて退職するという事態に陥ってしまった。河崎さんのご苦労もたいへんなものだったろう。同館を去って兵庫県立美術館へと移られた河崎さんは、2007年に「美術館のゆくえ」という文章を発表し、次のように警鐘を鳴らしている。

「既得権を主張し美術館の危機を危機と感じない学芸員、美術館はおろか文化行政とは何かを勉強しないで結果のみに向かって仕事をする行政職員が蔓延する状態で、来館者意識不在の美術館運営は迷走するばかりである。果して美術館運営は、日本の行政意識の中で健全に成立するのだろうか」
(慶應義塾大学アート・センター編『文化施設の近未来――アートにおける公共性を巡って』所載)

今回の書籍のほか、こうした文章を含めて、河崎さんには良い勉強をさせていただいたと、今、振り返って思うしだいです。

『長谷川三郎 空想美術館』書影