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張くんのギャラリー

2019-08-31||鳥原 学

昨夜、”Mid-Levels Gallery(半山ギャラリー)”のオープニングに行ってきた。主宰者は張鈺くん。日本写真芸術専門学校で受け持つゼミナールの卒業生で、いまは武蔵野美術大学の院生だ。来日以前、彼は中国の美大をすでに出ていたから、最初から表現の基礎はできていた。
そんな彼が専門学校時代に取り組んでいたのは、日本の明治期の西洋建築や外国人墓地、廃墟になった建物などをテーマにした作品。アジアにおける、近代西洋文明の受容の典型を、日本のなかに見つけようという試みだった。中国の若者が、そんな興味を抱いているのかと少し驚いた。院に進んでからは、現代の日本の景観についての作品を手がている。どの作品にも、端正さのなかに少し寂しい雰囲気がある。

ギャラリーのオープニング「Japan Playback」展では、そんな張くん自身の作品ではなく、コレクションしている日本人の写真を並べた。それもネットオークションとかで買い集めた無名のアマチュアのものだ。以前からSNSなどで、少しずつ公開していたもので、見るたびいつも感心していた。

張くんは、このギャラリーを「中国の作家とか日本の作家とか、あるいはアジアの作家たち交流」の場に育てるつもりだという。じっさい、オープニングには中国人と日本人の彼の仲間たちでかなりにぎわっていた。作家よりプロディユース能力の方が高いのかもしれない。

どっちにしても、東アジアの若い創作者たちは、政治状況とは別に互いを良い意味で刺激し合っている。この動きを、私たち大人こそが大切に育てなければならないのだろう。