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『写真のなかの「わたし」』と、森村泰昌さんの『自画像のゆくえ』

2019-11-11||鳥原 学

森村泰昌さんから新著『自画像のゆくえ』(光文社)をお送りいただいた。
新書だけれど600ページを超えており、自画像の発祥と、近代における日本人の自画像の受容を網羅している。
その出版前に、森村さんから「あなたの著書(『写真のなかの「わたし」』を参照しましたよ」との連絡はいただいたが、冒頭で、はっきりとそれを書いてくださっていて改まめて驚いた。
20代の頃から森村作品に強い影響を受けてきた私としては、すこしだけ恩返しできたようで、とても嬉しかった。

『写真のなかの「わたし」』については、新聞などから取材を受けることも多かったから、一般からはある程度の反響があったのだと思う。ただ写真関係についてはごく一部を除いて評価はいただけなかったようだ。
そのなかで森村さんは、いち早く読んでいただき、トークショーにゲストとして読んでいただいた。そのときビッシリと付箋をされていたのをよく憶えているが、すでに『自画像のゆくえ』を計画されていたのだろう。
私の本は、もともと写真学校でコスプレ写真をよく見たことが執筆の動機だった。二次元のキャラクターになりきることで、息ぐるしい社会のなかでコミュニケーションを保っている若い世代がいる。
彼らと、自我の表現である西洋美術に悩み、それを借りた自画像を撮り続ける森村さんとはどこかに通っているのかもしれない。

そんなことを思いながら、『自画像のゆくえ』を開いてみる。