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鈴木秀ヲさんの『ave maria 少女の家政學』

2019-10-07||鳥原 学

先週、土曜の午後、小伝馬町にあるルーニィ247 fine artsに向かう。鈴木秀ヲさんの「ave maria 少女の家政學」展が開催中なのだ。ちょうど鈴木さんが在廊されておられ、話しができて楽しかった。作品も人柄も、良い意味での変わらなさに嬉しさを覚える。

鈴木さんには20年ほど前、私が担当していたギャラリーで、前作にあたる作品の展示をしていただいた。そこを辞めてから後、疎遠にはなっていたがある会合で再会し、SNS上でもお付き合いが始まった。また1970年代に、鈴木さん自身を含めた若い写真家たちが制作した、実験的な冊子を貸していただいてもいる。この資料、果たしてどう活用するのかはまだ思案中だけれど……。

され、今作は1940、50年代のアメリカン・アドバタイズメント的な雰囲気でとても楽しく、少しだけ毒もある。島尾伸三さんのアートディレクションによる同名の写真集も、レイアウトや印刷が行き届いて良い観感じだ。鈴木さん、島尾さんとも東京造形大学で大辻清司さんの教えを受けている。

大辻さんの教え子といえば「コンポラ」というイメージを持つ人も多いようだ。たしかに日常生活に対する批評的な観察や、モノに対する好奇心、作品全体の佇まいに見られる品の良さという点に共通するものはある。ただ、それぞれの個性は多様で興味深い。鈴木さんの作品は、戦後の若者たちが受容してきた欧米の文化を混ぜ合わせ、独自に咀嚼して生まれたもののように思う。

鈴木さんは次回作も計画中とのことで、楽しみがまたひとつ増えたというしだい。