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戦争報道の番組を見ていて。

2022-03-16||鳥原 学
報道番組に珍しいゲストが出ていた。浅田彰がウクライナでの戦争について熱くコメントしていたのだ。曰く、ウクライナの大統領の振舞いは立派だがそもそも彼は政策に失敗した責任がある、バカなロシアの大統領の為なんかで若者が死ぬことはない。僕だったら、自分の教え子たちには戦争から「逃げろ」と言いたい。さすが「逃走論」の人である。
このような意見を聞くことは多く、私も多少はそう思うだけに、ウクライナ人の声を聴くと複雑な気持ちになる。現地の若者の多くは、自ら銃を手に取っているようだし、日本在住のウクライナ人ユーチューバーの兄弟も祖国に戻って戦うことを決めたと発言していた。彼らは権力者たちに唆されているわけではなさそうだ。
現地で取材をしているジャーナリストの佐藤和孝は、ウクライナ人のリアリティについて、東洋経済オンラインで次のように書いている。
「日本のどこかの評論家だかで、「ウクライナは白旗をあげたらいい」と言った人がいるんでしょう。大馬鹿者ですよ。だったらウクライナに来て、みんなにそう言いなさいと思う。
自分の国、文化や歴史がなくなるんですよ。安全圏で何もわかっていない、命を懸けたこともない人がこれから命を懸けようとしている人たちに向かって言える言葉じゃない。
この国はロシアに踏みにじられてきました。ソ連崩壊でようやく独立国家になったのに、またそのときに戻ってしまう。そうならないために血を流すことを彼らは厭わない。ゼレンスキーも含め、名もない人たちの気概がこの国を勇気づけているんです」
インターネットが繋ぐ世界はフラット化したように見えて、そうではなかった。本を読んで歴史や地誌を学んで分かっているつもりになっても、その土地で生きている訳ではない。ふだんは同じように話している友人が、こういう時に知らなかった顔を見せる。
この戦争の報道を見ていて受けるショックのひとつは、その生な部分がクリアに見えてしまうことから来ている。