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マイク・ディスファーマーという写真家

2026-03-12||鳥原 学
死後に”発見”された写真家の話は少なくない。1950年代に75歳で孤独死した写真家マイク・ディスファーマー(Mike Disfarmer)もそのひとり。
アーカンソー州の片田舎で長く肖像写真を撮っていた彼は、数千枚 のネガと現在の価値で約20万ドルほどの預金を残した。資産は兄弟姉妹とその相続人6人に分配されたあと、管財人はネガを5ドルで市長に売却。さらに市長は、町の新聞編集者兼弁護士のピーター・ミラーに1ドルで転売。
そのミラーが写真の価値に気づき、1976年に初の写真集『ディスファーマー:ヘーハー・スプリングスの肖像、1939‐1946』を出版をすると高く評価された。当時の「ニューヨーク・タイムズ」の評にはザンダー、アーバス、ペンの作品にも匹敵と書かれている。その後、ディスファーマーのヴィンテージが高値で取引されるようになり(現在は1万5千ドルほど)、乾板はアーカンソー州のNPOに寄贈され、財団もつくられたりしている。
問題は遺族がこうした経緯を、2019年まで知らなかったことだ。著作権法では、写真やネガの所有者は それを展示したり販売したりすることはできるが、画像をプリントしたり複製したりはできない。その権利は撮影者または相続人が持っている。
ということで、当然のように係争事項となり、最近ようやく裁判が終わった。結果は、相続人は著作権と、ディスファーマーの乾板約3千枚と、モダンプリント数百枚を所有することになったとのこと。
生前のディスファーマーは親族と絶縁し、その姓も変えていた(もとはマイヤー)し、ミラーや美術館の力がなければ知られもせず彼のネガも写真も廃棄されていただろうし。

ヴィヴィアン・マイヤーの件もなどは今も裁判が続いている。写真家や美術かの遺産についての権利も義務も、『血縁(法的相続人)』と『功績(保存・評価を確立した外部者)』のどちらにあるべきかは難しいところですな。日本の場合は、そもそも写真がそれほど美術市場で流通するものでもないので、こうした心配は起こらないのだろうけども。