Birdsinc

【最近の写真集など ⑫】

「過去は外国である」と言ったのは山本夏彦だったか。ただ、それが記憶しているほどの昔ならば、いつか旅した国内の遠い地方都市くらいの距離感かなと思う。

髙橋和海さんの『愛しのユーカ』は、1986から93年にかけて撮影された女性のポートレイトは、そんな遠さを感じさせる。モデルの女性たちのファションとか髪型とか目つきとか、彼女らが置かれた部屋の雰囲気とか、なにより髙橋さんの眺め方とか。これは知っている、どこかで体験したという気分になる。思い出せない過去のシーンが急に蘇るようで、亡霊を見ている感じ。ちょっと、いや、かなりドキドキしてしまう。

 

髙橋和海『愛しのユーカ』
定価:3,520円(税込み)
発行元: 東京綜合写真専門学校出版局

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA