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2022-05-22||鳥原 学
写真を趣味にしている96歳のご婦人が、ついに銀座で個展を開くまでに至ったという記事が、あるWEBメディアに掲載されていた。それを読んでいるうちに、私が写真を仕事にし始めた頃のことを思いだした。

最初の職場は、老舗の写真現像所である写真弘社の銀座店の店頭だった。ギャラリーの運営を担当するとともに、アマチュアのお客たちのプリント注文に対応したがそれも楽しかった。それぞれの人生をの物語をよく聞かせてくれもらった。

なかには個人的にも親しくなった方が何人かいらっしゃった。撮影済みのリバーサルフィルムを何十本並べ「現像して、いいカットがあったら2Lに焼いといてよ」なんて言う方もおられた。写真教室の講評会に出してそれが褒められると、こちらも嬉しかった。

現像済みのスリーブを見ていると、先生の指導で撮った良い写真と、その人が本当に撮りたかった写真が見分けられるようになる。お客さんが本当に喜んで意欲を沸かせるのは、後者を選んだ時だった。良い写真より、その人にとって大事な写真というのがあるのだ。今でもそれが、私の写真を見るときの基準になっているのだと思う。