Birdsinc

マイ・フェイボリット・パンスタイル

2021-01-22||阿古 真理

子供の頃から、朝食がパンだったこともあって、朝はパンを食べると決めている。旅行先などでご飯の朝食も食べたことがあるが、慣れないせいか、何となく「朝からコメ粒をちゃんと噛んで消化するのは疲れる」、と思ってしまう。

 パンにすると、料理をほとんどしなくて済む。ご飯だと、味噌汁を作ったり、魚や卵を焼くなどおかずを決めて料理しなければならない。炊きたてご飯を食べたければ、早起きするか前夜にセットする必要もある。いろいろ準備するのが面倒、というのもパンを選ぶ理由の一つである。

 毎朝がパンなので、引っ越すときは、必ず近所にパン屋があるかどうかをあらかじめチェックする。パンを買って食べてみて、「この味ならよし」と思えることが大事。幸い、今住んでいる町には、私が好きなサクサクした食感の山食パンがおいしいパン屋があるので、6枚切りを切らさないようにしている。

 ちょっと「浮気」することもある。どこかへ出かけた折、気になるパン屋を見つけたら、食パンとバゲットを中心に、食事にできそうなパンを買うのだ。昼食をパンにするときは、総菜パンではなくサンドイッチとデザートにする菓子パンを選ぶ。

去年、『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか パンと日本人の150年』(NHK出版新書)という本を出した関係で、リサーチを兼ねて気になるパン屋へ出かけることもある。そのときも買うのは食べ比べする目的もあり、ふだんと同じ食パン、バゲット、カンパーニュなどだ。

ふだんと違う店で買ったパンがおいしかったとき、朝食は至福の時間になる。そして、そのパン屋がある町に住む人が羨ましくなる。いつか、おいしいパン屋が二軒、三軒とある町に住んでみたい。

 

初出:『B&C』2017年11・12月号